医師不足は避けられますか?
国は何をし、地方はどうしたら良いですか?
医師はどうすべきで、患者は何を求めますか?
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我々は福島大野病院事件で逮捕された
産婦人科医師の無罪を信じ支援します あれから2年が経ちます 多くの医療系ブログでこの件に対しエントリーされています その皆さんと同じ気持ちで、私も去年に続き記事を書きます 少しでも、医療従事者以外の心にも、我々の声が届きますように 同じ産婦人科医として、この逮捕はいつ我が身に降りかかるかもしれない事件として 心に刻まれました 医療は絶対ではない事、不確定要素を含み なし得る最善の治療をしたとしても、患者の状態が快方に向かわない その事を噛みしめながら日々臨床に当たります もう少し何かできたのではないか、もっと早く介入できたのではないか そうすれば患者さんの状態はもっとよくなったのではないか その振り返りを繰り返し、次の患者さんの診療に当たる毎日です ですが、そのフィードバックをいかに繰り返しても 避け得ない突発的なアクシデントは、医療には存在します それを後方視的に非難し、結果論で責めたてる事は非常に簡単です ですが、それを心ある医療従事者は決して行いません それが明らかな過失、未熟な技量によるものなら改善の余地はありますが そうでないならば、その非難は自己満足以外の何も生み出さないからです 産婦人科において一人科長で地域の周産期医療を担う事は 心身ともに大きなストレスとなります 365日24時間on callである事が当たり前 年に200例の分娩が全て上手くいって当たり前 当り前である事が、当り前でない事に気付いてもらえない地域でも 期待に応える責務のみ担わなければいけない、そのストレスは 地域から医師が逃散する大きな理由となります 医師は数々の場面で、その役割を担うに足るかどうか試されます 初めて一人で分娩を取る時、初めて産直に出る時、初めて帝王切開を行う時 初めて一人科長を任される時 それぞれの場面で、ある一定の技量に達したと認められ、次のステップに進んでいきます それを任されるのはそれまでの背景となる診療と、診てきた患者さんがいるからです その場面で状況を任された医師が 突発的なアクシデントに遭遇し、結果として不幸な転帰となった時 その医師を責めたてる事は、その場面に遭遇する状況を結果として生み出した システムの問題を無視し、個人の責任に帰結する乱暴な議論です 人手が足りないのは、その個人の責任ではありません 応援がすぐに駆け付けられない状況は、その個人の責任ではありません 一人が、その状況で出来得るベストな診療を尽くした時 周囲がその個人を責めたてる事は、安全地帯から非難しているだけです その立場に立った時、その個人以外の誰しも別の方法で患者を救命しうると言うならまだしも その立場に誰が立ったとしても、避けえない結果であると思うのが今回の事件です 一人の医師が地域の周産期医療を担っていました そして予期し得ないアクシデントに遭遇しました 医療従事者は医療ミスではないと言いました マスコミは医療ミスだと騒ぎました 地域の周産期医療を守っていた医師が逮捕されました 他の産婦人科医も、明日は我が身と恐怖を覚え地方から去って行きました 地域の周産期医療を守ってきた産婦人科医は去りました たった一人の産婦人科医の逮捕に、全国の産婦人科医が反応しました その逮捕された産婦人科医は、明日の自分だからです ミスを犯していなくても逮捕される、そんな前例が2年前に生まれました それが特殊なケースであるならば、全国の産婦人科医は自分の事とはとらえません その産婦人科医はかつての自分であり、今の自分であり、明日の自分であるかもしれない そう思うからこそ、全国の産婦人科医が反応しました ですが、それをマスコミはわかりません。非医療従事者はわかりません 「医療ミスがないならば、なぜ死んだ」 そう問いかけられた時、私は絶望感を覚えます 昨日の、今日の、明日の私が、あの時逮捕されていたかもしれません だからこそ、理解し合えない現状に絶望感を覚えます 必要なのは訴え続ける事です わかってもらえるまで、訴え続けます あの時逮捕された医師は間違った事をしていません 一産婦人科医の私はそう訴えます そして全国の産婦人科医がそう言っています どうか、どうかその意味を皆さん考えてみてください 我々は福島大野病院事件で逮捕された 産婦人科医師の無罪を信じ支援します PR
医師の給与について考えてみます
医師不足の中医師の給与はどうなっているか 残念ながら手元に具体的なデータはありません ですが この数年間で急速に進行した医師不足、その中で医師招聘に用意される待遇と 医師不足がまだ深刻化していなかった、例えば2003年の医師平均給与を比べると 現在の招聘時の待遇の方が良いだろうなと言う思いはします 大学病院、公立病院、私立病院、診療科、診療応援回数などで年収の幅は大きいでしょうから 勤務医の年収の平均は幾らであるとは言えても、個々人のばらつきを考えれば 「医師の給与」と言う大雑把な議論をするのは確かに難しいです ですが、「生活に困る」と言う事態に医師が陥る事は 無茶なローン組み、高額な慰謝料請求、事業の失敗など、比較的稀な事例を除けば確かに 少ない事でしょう 「食うに困らない」職種である事に異論は少ないと思います お金の事について論じる事は下賤な事 聖職者がお金を要求する事は下賤な事 赤ひげたる医師が高額な給与を要求する事は、言語道断 大きな声で自らの待遇改善を要求する前に、しっかり働け そんな建前は空気として医療界に漂います 医学部の志望理由は? と問われた医学部受験生が 「お金のためです」とは決して言わないように ですが、現在の医師不足の状況と絡めて、医師の待遇を患者側から批判されると さすがに「ムッ」としてしまうわけです 先日雑誌を読んでいたら投書欄に医師の給与について触れた投書がありました 投稿者曰く 「医師不足ではあるが」「医師は高給で」「庶民の生活を知らず」「医師の給与を減らし」 「社会保障に回せば」「医療崩壊は改善するのではないか」 と言ったような内容でした 確かに日本人の平均給与の数倍を、医師は収入として得ています それが多すぎるか、少なすぎるか、判断はまちまちですが 上述のような投稿者と意見を同じくする人たちが、ある割合で存在する事は間違いありません 私は医師の給与を減らすという意見に反対なわけではありません 医師の給与が多すぎる→そのお金を弱者に回せ→ひいては医療崩壊が改善する と言う論理にはついていけませんし、日本到る所で「医師の給与を減らせ」運動でも起こったら 逃げ出したい思いでいっぱいになりますが それでも「医師の給与が多すぎる」との意見が少数派ではなく、医療崩壊が起こっている現場 でも根底にあるならば 医師の給与を減らせば良いと思います ですが、その代わり、ただ一つだけ 休みが欲しいと思います 家族とゆっくりする時間が欲しいと思います 給与を減らす分だけ、減らした分だけ、自由な時間を欲しいと思います 医師は時間を切り売りする職種です 自分の時間を切り裂いて、家族の時間を切り裂いて、睡眠時間を切り裂いて 切り裂いた分の時間を 患者さんの「命」と言う時間を延ばしていく事に使います 自分の時間が切り裂かれた分、他人の時間が延ばされます 命に金額はなかなか付けられません その命を延ばしていく職種だからこそ、切り裂かれた時間に相応の対価が付けられています 医師不足の現状において、医師が自分の時間を増やしたいと願うなら その職場から去るしかありません そして、実際に多くの医師が現場を去っていきます 私も、臨界点を突破したら、去っていく事をせんたくするでしょう そして、それは難しい事ではなく、思いきりさえつけばハードルは極めて低くなっています そんな状況だからこそ、現状で「医師の給与を減らせ」と言う人達に聞いてみたいのは 医師の給与を減らす→医師の勤務時間が減る→カバーする医師はいない→医療崩壊進行 医師の給与を減らす→医師のモチベーション低下→リスクのある症例お断り→医療崩壊進行 医師の給与を減らす→医師が去る→医師集まらない→医療崩壊進行 などの流れに対し、どれだけの危機意識と対策を持っているかです 給与を減らし、けれど勤務条件は今のまま と言う方針を立てられる状況と言うのは、被雇用者がその職場にいるメリットがデメリットを上回って いる時のみです また職種全体として全国津々浦々、どこへ行っても同一待遇と言う逃げ場のない場合のみです 果たして、日本はそうなるのでしょうか? また日本と言う枠を超えても、海外と言う選択肢が医師には残されています その時はどうするのでしょうか? 給与が減っても自分の時間が欲しいと言う医師は少なくないと思います ですが、医師不足の中抜けた人材をカバーする人がいなければ、誰かの仕事の時間を減らすわけには いきません 結果、医師の勤務時間は減らせない→医師の給与を減らせないと言う事になっています 勿論医師の勤務時間、労働環境はそのままで、給与のみを減らすと言う選択肢があります 上述の投稿者の意見も「医師の労働時間を減らす代わりに、医師の給与を減らせ」ではなく 今のまま働く事を前提に、給与・待遇を下げろと言っている事は明白です でも、そんなの嫌です そこまでのボランティア精神を持てるほど、聖人君子じゃありません 参考はいつもお世話になっている あけましておめでとうございます 参考はhirakata先生の |
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