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医師不足は避けられますか? 国は何をし、地方はどうしたら良いですか? 医師はどうすべきで、患者は何を求めますか?
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夜の3時に病院のPHSが鳴ります
隣で寝ている妻と子供を起こさないように、枕もとのPHSに手を伸ばします
寝ぼけた声で電話に出ないように心掛けながら
「今日は第2拘束でもないフリーの日だったよな。」
そう思いながら、通話ボタンを押し
「はい、西川です。」
冷静になろうと思いながらも、夜更けの電話につい無愛想になってしまいます。
「夜分すいません。病棟の城ケ崎ですが、菊谷先生と柏崎先生からグレードAカイザーと、お産になりそうなVBACの患者さんが重なってしまった為、西川先生に応援を頼めとのご連絡でした。」
病棟助産師の城ケ崎が、慌てた様子で状況を説明します。
緊急帝王切開に術者と第1助手で当直の菊谷先生と、柏崎先生が入れば、病棟から産科医がいなくなります。
その間に進行しているお産がVBACの患者であれば、助産師任せにはしておけません。

今日の休みは久しぶりに朝ごはんを家族で一緒に食べて、娘の好きなアニメの映画を見に連れて行ってやりたかったのにな…。
娘の泣き顔が頭をかすめます。
何度となく緊急で呼び出され、約束を反故にしてきたとは言え、約束を破る度心が痛みます。

「わかりました。すぐ行きます。15分位で病棟に行くと先生達に伝えてください。」
感傷を拭い去り、諦めの気分で仕事モードに頭を切り替えます。
吊下げてあった服に腕を通しながら、ベッドに目を向けると妻が起き上がり心配そうな顔で声をかけます
「また緊急カイザー?」
付き合っている時から、何度もその言葉でデートを途中で切り上げた為か、元消化器病棟の看護師の妻もすっかり産婦人科用語に詳しくなりました。その分今回の緊急の程度もわかってくれているようです。
「グレードAのカイザーと、VBACの患者がいるみたい。急ぎで行ってくるよ。奈津美にはすまないって。」
第1、第2拘束でもないフリーの日とは言え、今までに緊急で呼ばれた回数は少なくありません。
その度駄々をこねる娘に向かい

「お父さんは大事な仕事をしているの。大事な命がきちんと産まれてきますようにって。奈津美みたいに元気な赤ちゃんが、ちゃんと産まれてきますようにって。赤ちゃんと、そのパパとママの為に頑張っているのよ。
だから、泣いてお父さんを困らせたら駄目よ。ちゃんといってらっしゃいって言いましょうね。」
5歳になる娘にそう語りかける場面を、何度も目にし、その度娘と支えてくれる妻に申し訳ない気持ちになります。

「急いで帰ってくるよ。そんなに時間はかからないと思うから。」
時間がかかるかもなと、頭をかすめた思いを脇に寄せて笑顔を作って、2分でほぼ身支度を整えた後で妻にそう言います。
「無理しないでね。昨日も遅かったでしょ。体を壊さないか心配で…。」
心配そうな顔は今回の緊急性だけではなく、繰り返される過重労働に対する心配の顔でもありました。

どんなに働いても20時間でカットされる時間外勤務手当
決して充足される見込みのない慢性的な人手不足
いつ我が身に降りかかるかわからない訴訟のリスク

それでも、行かなくてはなりません
大事な仕事をしていると、妻が娘に語りかけた職種に身を置く内は
いつ心が折れるか、体が限界を迎えるか
それは決して遠くないことだろうと漠然と思いつつ、まだ決めかねているその間は

「行ってきます。」

そう言って、まだ暗闇の中病院に向かいます
PHSの呼び出しから5分後の事でした

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産婦人科のよくある風景
珍しくもなく、日常に紛れる風景
でもこの人たちが、最後の砦となって、産婦人科の「今」を守っています
この人たちが前線から撤退すれば、倒れれば
地方の周産期医療は簡単に崩壊します
そしてそれは、身近な場所で起こる事かもしれません

どうか今一度、産婦人科医に花束を

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コメント
無題
もうやめましょうぜ。自分の生活を犠牲にしてまで何をしたいのですか。このご時世患者は全く感謝しないばかりかちょっとでも不都合があるとイチャモンつけてくるばかり。世間知らずの法曹界も全面バックアップ。

自分自身が満足していないと他人にいい医療はサービスできません。私もDQN患者ばかりの救急外来に嫌気がさしたので近日中に開業します。

なに、医者の一人や二人いなくなったって大勢に影響はありませんよ。
【2007/07/12 00:26】 NAME[9年目内科医] WEBLINK[] EDIT[]


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