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医師不足は避けられますか? 国は何をし、地方はどうしたら良いですか? 医師はどうすべきで、患者は何を求めますか?
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久々のブログ投稿です


読売新聞社は先日医療改革について提言を行いました
その中でも

・医師不足招いた「自由選択」
・医師を全国に計画配置

の記述について、地方勤務医の産婦人科医として幾ばくかのコメントをしたいと思います
多くの紙面を割いての提言ではありますが、容量が多い分突っ込み所満載で、どれから手をつける
べきか難しいところです。
多くの医療系ブログにて批判的に記述されていますので、こちらでは以下の記載について主に手を
つけてみたいと思います

以下2008年10月16日 読売新聞より引用 青字:原文 赤字:trias記述
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医師不足が問題化したのは、2004年度に始まった医師の新たな臨床研修制度(義務研修)が
きっかけだ。研修先として、出身大学ではなく、都市部の有力病院を選ぶ新人医師が増え、地方の
大学病院などの人手不足が深刻になった。医師が、勤務する診療科や地域を自由に選べるため、
偏在につながっている。

 本来研修医の参入が数年途絶えただけで、組織として回せない体制ならば、それは始めからマン
 パワーと仕事量のバランスが取れていません
 綱渡り的に、数人の減でシステムが破綻する組織ならば研修医制度がどうあれいずれ後先が見え
 ていた事でしょう。
 元々医師の献身的な働きでカバーされていたものが、臨界点を突破して発露しただけであり。2004
 年の初期臨床研修制度の発足は原因ではなく、トリガーでしかありません。
 記事では「きっかけ」として表現されていますが、トリガーはトリガーでしかなく、そのトリガー、初期臨
 床研修がなくても遅かれ早かれ別のきっかけが医療崩壊のトリガーとなっていた事でしょう。
 産婦人科分野に限れば、大野病院事件は必要十分条件であったと思います。
 
 確かに地方の大学病院の人手不足は深刻です。ですが、それは初期臨床研修「医(師)が診療科や
 地域を自由に選べるため、偏在につながっている」と言う単純なものではありません。
 確かに今回の21年度のマッチング結果を見ても、地方で県単位の人数として研修医を減らしている
 県があります。
 ですが、地方であっても、大学病院では人数を減らしながら県単位では研修医師数を増やしている
 県はあります。
 それは大学病院自体に研修の魅力がない事を示している事になります。

 大学病院のように、本来看護師・看護助手・薬剤師・事務がするべきような仕事で、研修医から上級
 医まで疲弊しながら雑務に追われる様な病院は元々研修にふさわしくありません。
 その点を改善せずして、人が集まらないのは当然です。

 研修医はその(都)道(府)県において初期研修をするのを嫌うのではなく、プログラム内容を含めた病
 院の総合力で大学病院を始めとする、研修医が集まらない病院を忌避しているに過ぎません。
 大きな地域単位(道・県)で見れば、研修医を呼び込む事は不可能ではありません。ですが、市町村
 単位で全ての病院に研修医を呼び込む調整をするのは困難です。
 それは、あなたは研修をする上で総合力で上回る病院で研修をするのを諦めて、勝るものは何もな
 い病院で研修をしなさい、と宣告するのと同じ事です。

 勿論最初から応募者数と採用数の人数が同じであれば、否応なく研修医も選別されて総合力で劣
 る病院での研修を余儀なくされる人も出てくるでしょう
 ですが、現実問題として、総合力で上回る病院が育成できる研修医の人数は決して少なくなく、応募
 者数を上回る採用枠がマッチングプログラムとして用意されています
 これを利用して、より良い研修を受けようと、より良い研修病院へ初期臨床研修医・後期研修医が集
 まるのは当然の事であり、決して非難される類のものではありません。
 
 仮に人が集まらない市町村の病院へ研修医を誘導しようとするならば、総合力で勝る病院の定員
 数を削減し、応募者数と採用数を同数にし、強制的にマッチさせるしかありません。
 ですが、それは本来恵まれた環境で育成可能であった研修医を、敢えて総合力で劣る病院で研
 修をさせると言う事に他なりません。
 物理的に育成が出来ず受け入れ困難なのではないにも関わらず、敢えて劣る環境で研修をさせ
 る事に意味はないと考えますし、それは義務化される際の初期臨床研修制度の理念にも合わない
 はずです。

 確かに研修する病院はマッチングによって自由に選べます。また通常の勤務医も診療科・地域を
 自由に選択できます。ですが、それはより良い環境で研修を受ける事に大きな理由があります。

 そこで、医師の研修先を自由選択に任せるのではなく、地域・診療科ごとに定員を定め、計画的に
配置するよう制度を改める。対象は、義務研修を終えた後、専門医を目指して3~5年間の後期研修
を受ける若手医師とする。そのため、地域の病院に医師を派遣してきた大学医局に代わり、医師配置
を行う公的機関を創設する。

 何故に、医師不足→いや元凶は医師の偏在→自由に選べるのが問題→規制しよう→医師の計画
 配置なんて短絡的な発想が可能なのかは理解できません。
 まず大元の、偏在を解消できれば現状が改善するという考えがわかりません。今後新規参入する
 3-5年目の後期研修医:約24000人頭の強制配置にて、どこをどうやり繰りするつもりなのでしょう
 か。
 若手医師を各都道府県に割り振るとして、医師が比較的集まっている地域として関東圏があります
 が、その都県への割り振りを全てゼロにするのは不可能でしょうし、都道府県の割り当てはどうする
 のでしょうか。人口対医師数及び診療科医師数の割合で割り当てしていくのでしょうか。

 医師数が比較的多い地域・診療科であっても、どこも内実比較的戦力となる後期研修医は足りず
 欲しがります。余っているところなどありません。
 それを地域のみならず、診療科までもコントロール可能とは、大言壮語甚だしく、まさに官僚的発
 想でむしろ楽観的な発想が羨ましくもあります。
 
 また、本人の希望とすり合わせて調整する旨の記載もありましたが、どの程度強制性を持たせる
 のでしょうか。仮に完全なる強制性を持たせたとしても、お望みのような医師数のコントロールは不
 可能だと思いますし、強制性を緩めるならば現状との人数差に大きな違いは出ず意味はありませ
 ん
 
 すなわち、3-5年目の医師に対する強制性を持った計画配置をしても、医療崩壊の現状は改善し
 ないと思いますし、むしろその副作用のほうがドラスティックに出現する事と考えます

 まず、医師の計画配置とは、ある程度の強制性を持っての文脈である事は間違いありません。
 これは憲法違反ならない確固たる根拠があるのでしょうか?
 かつて「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律盗聴法と呼ぶ俗称がありましたが、
 どこをどう言い繕うと、居住地・勤務地まで強制されるのであれば、それは「徴医制度」その
 ものです。公務員・及び会社員にも転勤はある旨の事も言われますが、それは契約を結んだ2者
 間の事であり、国が一般の国民に対し強制力を持って配置する制度が、前例として作られる事に
 強い危惧を覚えます。

 医療は公共財との文言も見られましたが、すなわち公共の福祉に反すると国が認定した際には、
 医師の基本的人権は制限されて然るべきと言う前提に立ち、読売新聞社は提言を行っているの
 でしょうか。医師はどこにおいても医師足り得ます。知識と技術を以て、健康増進に寄与します。
 それは地域・診療科問わずです。
 ですが、この提言は、その働きでは満足しない、もっと犠牲を払い、もっと働くのが当然であると、
 暗に示した医師批判でもあります。
 人を直接的に傷つけるわけでもなく、普通に働いている医師に対し、その場でそうして働いている
 事こそが、公共の福祉に反しているのだと、存在を否定している事と同義です。

 妻も子も親もいる医師に対し、その環境を犠牲にして、国に尽くせと
 実現するならば、恐ろしい国になるものです
 いずれ、看護師も、助産師も、その他の業種にまで配置論が及んでも、読売新聞社は何も言わ
 ないのでしょうか。そうなのでしょう。医師に対しては計画配置もやむを得ないと断言できるのです
 から。

 最後に大学医局に代わり、医師配置を行う公的機関を創設とありますが、全ての医師を管轄下に
 置きたいとの素直な発想で、嗤えます。確かに楽です。全て手駒のように医師を配置できれば。
 ですが、そんな公的機関に従う医師がどこにいるのでしょうか?
 医局人事には従えても、見ず知らずの木っ端役人の言う事などに従う道理がありません。
 同じ環境に身を置いて、同じ患者を診て、同じ手術をして、同じ当直をして、同じ苦労をして来た仲
 間が困っているなら、助けに行こうとも思います。頑張ろうかとも思います。
 ですが、強権発動でただ指示される病院へ配置される医師のモチベーションはどうでしょうか? 
 数年の刑期にも似た配置年限を終えるのを、指折り数えてひたすら待ちます。
 強権的に配置した以上、仕事量の管理義務は公的機関にあります。善意のサービス残業は行わ
 ず、公務員的な時間に沿った勤務となります。それは決して非難される事ではなく、労働基準法に
 沿った正当な勤務態度です。
 夜間当直・拘束時間を含めたマンパワーを、その公的機関は確保・維持できるのでしょうか?
 配置年限が終了した後に、逃げるように去って行っても非難されるいわれはありません。

 本当に、公的機関がマネージメントできると考えているなら楽観的で素敵です。
 勿論強制力を強化して、罰則を強化して、そんな態度には逮捕も辞さないと言った、非人道的な
 体制を公的機関が持つなら別ですが。
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コメントできた文面は僅かです。
ですが、その短い中に、勤務医として思うところが多くありました

読売新聞社の提言はアドバルーン的な面が大きく、これらが実行に移されるのは問題山積で
近いことではないと思います。またそう願います。

まあ2008年10月19日、本日の新聞に

 

 

医師計画配置に前向き…厚労省医療課長「よい規制」


と言う自画自賛記事が載っていて、少し嗤えます。

医師不足の原因は一義的ではなく、読売新聞社の提言の中には「安心医療に金惜しむな」など
まともな事を言っている点もあります。

ですが、力点が計画配置のような強制論に置かれている点が、認識の甘さ及び非医療従事者の限界かと
思います。
ですが世の中の流れを作り決定していくのは、その非医療従事者達です。
声ある声として届いていって欲しいと思います


勿論、医師計画配置なんて実現したら、そんな国からは去りますが

 

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