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医師不足は避けられますか? 国は何をし、地方はどうしたら良いですか? 医師はどうすべきで、患者は何を求めますか?
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産科当直は他の科の当直と比較し特殊な点が多くあります
1つは患者さんのもとに到着するのが1分遅れると、大きな違いが生じうると言う事です

院内当直制を採用している病院が殆どです
総合周産期母子医療センターのように、複数の産婦人科医当直体制を取っている病院もあります
ですが、実際地方では1人科長病院、2人体制病院、3人体制病院が未だ多くあります
そのような病院で院内当直体制を取るならば
1人科長病院では月に30回
2人体制病院では月に15回
3人体制病院では月に10回
の当直体制になります。

それにプラスして、緊急帝王切開術時のon call拘束を考慮すると
1人科長病院では月に30回
2人体制病院でも月に30回
3人体制病院でも月に20回
の当直+oncall体制になります

その間常に病院からの呼び出しに備え、気の抜けない拘束時間が続きます

この当直体制・拘束体制は明らかに労働基準法違反です
かつての産婦人科医と言えば、そのような労働条件を当然と思い働いていました
その体制が許容されていた前時代、それは今考えると決して望ましい体制ではないはずです
まさに産科医とその家族の自己犠牲に依存していた制度は、崩壊してしかるべきです

ですが現在もこのような当直・拘束体制は確かに続いています

労働基準法違反の是正を病院が勧告されるようになりました
それ自体は当然のことと思います
ですが、それによって現場の産婦人科医師に求められている事は
自主的」に院内に泊まるようにとの御達しです

病院側は「強制」はしません
紳士協定的」にお願いいたします
自己判断」で「主治医の責任として」泊まる事が必要ではないですか?
との御達しです

勿論「自主的」な泊まりであれば、その間特別手当などは支払われません
実労働時間があれば、それに対して時間外手当を支払うと言うスタンスです

病院によっては、強制とできない以上泊らなくても良い
on call制とし、必要時すぐに病院に駆け付けられるなら、それで良いと言う施設もあります

ここで最初の産科当直の特殊性に戻ります

患者さんのもとに到着するのが1分遅れると、大きな違いが生じうる
これを産科医が実感する機会は少なくないと思います

呼ばれて分娩室に到着したら、既にbabyが生まれていた
NSTで遷延性徐脈が連続してモニターされていた
子癇発作が出現していた
生まれていたbabyのApgarスコアが悪い上、弛緩出血+頸管裂傷が生じていて目も当てられない

そんな状況は決して稀ではありません
1分を争って、産科医は分娩室に向かいます
1分の対処の違いが大きな差となる場面があります
1分遅く到着した事で、分娩に間に合わない時があります

院内当直体制を取っておらず、on call制での呼び出しとしている施設ではどうでしょう?
呼ばれてから到着するまで、大きな心理的負担を感じます
自宅から病院までの距離がひどく遠く感じます
1分を争って、息を切らして病院へ向かいます
分娩室へ息も絶え絶えに到着する時があります

仮に分娩に立ち会えない場合、家族から何らかの抗議があるかもしれません
何より、安全性を担保できるのか、問題点は多くあります

その恐怖心が、産科医を「自主的」に病院へ泊らせる動機となります

ですが、その体制が続いていくとは思えません
現場の産婦人科医はもう限界です
いくら安全性を考慮して、産婦人科医は院内に常駐せよと言われても
労働基準法違反ど真ん中の、この当直・on call制度が
産婦人科医の自己犠牲のもと、いつまでも続くというのは幻想です

その対処としては、産婦人科施設の集約化、健全な当直体制を取れるだけの産婦人科医師数の
増員しかありません
妊婦にいくばくかの負担を強いるとしてもです。

チームバチスタの栄光」の麻酔科医 氷室の言葉
これじゃあ、医者も壊れるぜ

は現場の産婦人科医の叫びでもあります
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