医師不足の対処法、解決策、改善案が色々と出ています。
どうするのが、医師にとって、患者にとって、国にとって、地方にとって最善の策なのでしょう。
1)医師を高額の給与、休日を補償する人員体制で地方に招聘。期限付き。
医師が元々勤務していた職場を退職するのは、その待遇が適切でないと感じている場合も多いです。
その場合、待遇の改善によって医師不足の病院に呼び込む方法は適切でしょう。
ですが地方都市と僻地ではその待遇に更なる差が必要となります。また地方に永住しても良いと言う医師を探すのは困難でもあり、期限付きでの好条件募集が現実的かと思います。
一番簡単な方法でもあり、一番難しいこの方法。問題点は何でしょう?
1つは好条件にも上限があるという事です。地方が捻出できる、また地域住民の理解を得れると地方議員が考える条件とは、地方で勤務する事のマイナス面を考慮した場合割に合わないと医師が考える条件である事が多々あります。認識のギャップはどちらかが歩み寄るか、物別れに終わる事を是認するかですが、現状で売り手市場の医師に歩み寄りを求める事は実際的ではないと思います。
1つはそもそもフリーの医師自体パイが限られている為、医師不足の病院数に対し元々の医師数不足の為招聘しようがないという事です。これは医師を招聘する為の労働環境改善=周囲のマンパワー確保、の実現にも支障を来たし、悪循環になり得ます。
待遇改善は現在医師勧誘の必要条件でしかない、この現状はしばらく変わり得ないと思います。
待遇改善を声高に訴える事は医師にとってマイナスイメージでしょう
ですが、本来評価されて然るべき労働であり、一方でそれを評価する施設があれば当然医師はその施設に移動していきます。自ずと変わろうとしない施設であれば、何も言わずに立ち去るだけと。
ですがそれを医師の金儲け主義と批判する立場も当然あります。その意見が真に医師不足に悩む立場からなのか、安全な立場での意見なのかにより重みも随分と違うものではありますが。
2)医師の公務員化による人事権の把握
医師を公務員として雇い入れようとする地方は増えつつあります。3年間の派遣+1年間の有給研修など特典をつけている場合も多いようです。
地方にとって医師の人事権を掌握する事は大変魅力的です。僻地に強制的な人事権を持ち派遣が可能になる事は、医師不足に悩む地域、医師確保の期待をかけられている地方議員、地域住民にとって望ましく、安定した供給が可能なシステムを構築したいとの考えは理解できます。問題点は何でしょう?
1つはその公務員化に対する医師の応募が少ない点です。医師が数年単位で人事権を委ねる母体組織は、大概2つに別れます。強力な人事権を有する医局人事、金銭的なインセンティブを持つ民間医局、どちらも人事異動に対しそれ相応の(短期的であれ長期的であれ)、医師本人に対しメリットとなる人事であるからこそ、ある程度地方の派遣先を告げられても頷く事になります。
医師を公務員として雇い入れたいと考える地方の中には、ただ医師の人事権を手に入れたいと考えるのみの姿勢が見え隠れする場合があります。医師に対し人事権を有する場合、その代償として当然考慮しなければいけないその医師に対する報酬・対価について、公務員としての身分保障のみでは当然足りない事に対し、畑違いの地方行政の役人には分からない点もあるかもしれません。公務員としての魅力を感じる人に取り、職場を転々とし自分のスキルで稼ぐ事の可能な医師の取り扱いは難しいでしょう。
3)医師の強制配置、科の強制割り振り
強制力を以て障害を排除するというのは最も簡単であり、安易な手法ではあります。現在の医師不足の報道が溢れるにつけ、どうして強制的に配置しないのだと怒りを感じる人が増えるのも理解できます。
強制力が働き困るのは医師のみであり、医師のみの不満を飲み込めば医師不足に悩む地域、批判される国政、地方行政、国民の安心を担保可能と言う点で、最大多数の最大幸福の為、公共の福祉に反する現状改善の為との名目で、国家が医師の人事権を全て掌握するというのは魅力的でしょう。問題点は何でしょう?
言うまでもなく強制である点が最大の問題となります。憲法違反の訴えに結論をつける事が可能なのか、強制に対し本当に国民が納得するのか、医師の免許証を放棄した場合の取り扱い、不向きな科・望まない地方での非精力的な働きに対する罰則は、その強制力が他業種に及ぶリスクを考慮しているのか、など目の前の医師不足に対し、決して結論が出ない事は明らかです。
未だ本気で強制力を以て医師不足を解決しようと考えるメディア、政治家がいるとすれば、それは現在の医師不足に対してではなく、超長期的視野に立つ取り組みである事を受けとめる側も理解すべきです。
4)医師養成数、養成校の拡充
これも広く言われている事であり、現在の医師不足を鑑みるに方向性としては間違ってはいないと思います。
ですがこれもまた中~長期的な解決策であり、5-10年単位でより急速に進むであろう医療崩壊の解決策にはなり得ません。問題点は何でしょう?
医師を養成するのに学部6年、中途入学でも3年、初期研修に2年、科専攻後のspeciality獲得まで5年程度でようやく0.8人前の医師が出来上がります。計10-13年です。促成栽培を行うとしても、現在の要求される医療水準を満たすにはマイナス可能だとしても数年程度でしょうし、それすら無理かもしれません。
また例えば小児科、産婦人科に特化した医師を養成すれば良いとの意見もありますが、果たして可能なのでしょうか?非医師に取って、マイナー科の医師はその分野しか知らないとの見方もあるでしょう。確かにその一面もあるかもしれません。ですが、どの科を専攻するにせよ医学生時代、臨床経験をつむ中で各科にまたがる病態論は当然理解しなければいけません。真に小児科のみ、産婦人科のみとの知識を詰め込めば、その科の医師が出来上がるとの考えは、共通の知識をある程度有し、医学の中で共通言語を操れるという面を軽視しているように思えます。
何れにせよ短期的に医師不足を解決する方策ではありません。ただし見直す点にはあると考えます。
勿論医師を養成するにはその何倍もの医師が必要であり、かつてのようなマスプロの教育ではなく、少人数、臨床重視の現在の医学教育の水準を維持・引き上げた上での教育が、この医師不足の中可能なのかと言う問題点は残ります。
考えてみたけれど、上記の4策では現在の医師不足を即効的に解決できません。
何をどうすれば、本当に解決するのでしょうか?
解決する事が可能な問題なのでしょうか。
選択肢
1)諦めないで医師不足の解決策を考える
2)諦めないけれど医師不足から波及する諸問題を、仕方ない事だと認める
3)諦めて医療格差をあるものだと考える
4)何も考えないで成り行きに任せる
5)病院の世話にならないから関係ない
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