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医師不足は避けられますか? 国は何をし、地方はどうしたら良いですか? 医師はどうすべきで、患者は何を求めますか?
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政府が発表したところによると
「研修医のマッチング定員を研修医定員に合わせ、地方への研修医定着を促す」
方針の様です

医師不足は地方住民に強い不満を抱かせます
地方からの請願も大変な事でしょう
その要求を突っぱねる事は、地域から選出された議員にとって難しいことです
そのあまり、金の卵を産む鶏を食べてしまうような、迷走した方策が取られるようです

全国のマッチング定員は総数で1万3千人程度です
それに対し医師国家試験の1年あたりの合格者数は約8千人
5千人の定員に穴があくような制度ではあります
どこの病院も臨床研修医を募集する上で、その病院の魅力、売りを全面に出し研修医を勧誘します
それは指導医数の数であり、症例の豊富さであり、屋根瓦形式の指導体制であったりします
また一方高額な給与であり、非拘束時間の多さであり、中央に近いと言う地の利点と言うQOMLの面も当然その病院の売りになります

研修医の考え方は十人十色です
国公立であれ、私立であれ医学部の一学生として、また免許取得後は国家資格である医師免許を有する一社会人として

独身であるか、配偶者を持つか、子供もいるか、男性か、女性か、親が開業医であるか、勤務医であるか、非医師であるか
一人兄弟であるのか、兄弟がいるのか、親元に残るのか、親元から離れるのか
恋人がいるのか、恋人はいないのか、相手の地元はどこなのか、相手はマッチング先についてくるのか、遠距離なのか
メジャー科に進むのか、マイナー科に進むのか、研究をしたいのか、臨床をしたいのか、白い巨塔での出世を目指すのか、一臨床医で十分なのか
開業を目指すのか、勤務医のままでいるのか、仕事第一主義なのか、家庭優先なのか

様々な要因のパーセンテージを考慮しながら、将来を決定していきます
その選択先がどこであるのか、それは選択をした本人以外余計な口を出し評価するのものではありません
その当人にしか決められなかった過程を無視し、進路を押し付けるなど、ある契約が交わされているなどの例外を除き、望ましい形ではありません

その意味で国の管理による強制配置にも似た今回の措置には反対です

それを「今まで自由度が高すぎただけで、本来国家資格である医師免許保有者は、その免許の有効範囲を国により制限されてしかるべき」と今回の制限を歓迎する人たちがいるのも理解はできます
所詮、幾ら医師は集団に属さなくても医師免許だけで生きていけると言っても、国が医師法を改正する強権を発動すれば、医師の活動範囲など容易に制限されてしまいます
現在の深刻な医師不足の状況で、手っ取り場合のは強権による適正配置なのでしょう

では、この定員削減、強制地方配置の問題点は何でしょう
研修医の自由な選択を制限する以外に、何が問題となるでしょう
一つは、今回の政府の方針の背景には医師不足解消の狙いがあるという事です
良い臨床医を育てるの言うのが前提ではありません。

良い医師を育てたければ、豊富な指導医がいて、豊富な症例数が集まる病院で研修をさせるのが一番です
医師不足の地方で、医師不足の中、本当に人間を診る良医を育てるとなどと言う感情論は、現実を無視した責任放棄の言葉でしかありません
2年間の初期研修で力をつけるには、指導医数が少なくて良いわけがありません。症例数が少なくて良いわけがありません。患者の年齢分布に偏りがあって良いわけがありません。
ですが、政府が目指すのは中央への集中を是正、つまり中央の研修医定員を削減し、地方へ誘導、つまり医師不足地域での研修医定員を相対的に増やすと言う事です。

全県的に指導医数が足りず、教育できる研修医数に制限がある病院が多い地方に研修医を送り
相対的に指導医数が多く、研修制度の整った中央の研修指定病院を減らし、研修医の数を減らす

確かに医師不足県の総医師数は増えるかもしれません
政府が言う医師の偏在が問題と言う点では、医師不足は見た目改善するでしょう
ですがそれが真に研修医の為になるでしょうか?
本来地方の研修病院より、たくさんの研修ノウハウを培ってきた中央の病院から研修医枠が減らされるわけです
本来より良い研修を受ける事が可能だった研修医が、結局誘導でしかない研修医定員の見直しにより、格段に研修内容が見劣りする地方の研修病院で2年間を送る可能性があるわけです。
長い目で日本の医療レベルを鑑みるに、この事は真に国民の為になるのでしょうか?

また地域基幹で研修を終えた医師に、その地方の医師不足地域で勤務を義務化するなど
口汚く言えば、阿呆としか言いようがありません
「学徒動員」との嘲りもありますが、専門に初めて進む後期臨床研修医こそ、その選択した専門科での研修を指導医が豊富な病院で行うべきです
まだ専門分野を有さない医師を、この訴訟乱発の時代に僻地に送り込むなど、所詮その医師の診療を受ける患者も、訴訟の当事者になるかもしれない医師も
そのどちらにも関係のない政治屋の空虚な考えなのでしょう

自分がその立場なら、義務年限明けに必ずその地方から去るでしょう
遅れた医療レベルを取り戻すために、その僻地から去るでしょう

その時国はまた強権を以て医師の居住地を制限するのでしょうか?
焼け野原、見えてないのでしょうね。おめでたい事です。



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