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医師不足は避けられますか? 国は何をし、地方はどうしたら良いですか? 医師はどうすべきで、患者は何を求めますか?
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市民「いくら医者不足と言っても最近の医者の態度はひどいですよ。」

他人「何かありましたか?」

市民かかりつけの総合病院で私はずっと長い事診てもらっているんです。前の部長先生の時から長い事。」

他人「数年にわたる病院とのお付き合いと言う事ですね。」

市民「数年なんてもんじゃないですよ。もう10年近くも診てもらっているんです。それを最近来た新しい医者
が、あなたは落ち着いているようだから近くの開業医で診てもらったら?と失礼な事言うんです。」

他人「失礼な事ですか?」

市民「そうですよ。私はその病院が好きで、内科、外科から全部の科が揃っているこの病院で診てもらう事に
安心感をずっと持っていたんですよ。何かあったらすぐ他の科を受診できるし。それをまあ、お得意様をつかまえてよそに行けなんて酷い事を言えるもんですよ。」

他人「どうして開業医を勧めているのか担当医に聞いてみましたか?」

市民「怒り心頭であまり聞けませんでしたけど、外来の患者数増えすぎて待ち時間が長くなって苦情が来てるそうなんです。それで私みたいに薬だけもらいに来ている患者はよそに行けって。」

他人「待ち時間は長いんですか?」

市民「確かに待ち時間は長いですよ。1時間以上待つのもざらですし、予約なしで行った時なんて朝受け付けして診て貰えるのは15時位になる時もあるんですよ。」

他人「それは大変ですね。」

市民「そうですよ。本当に待つ方の身にもなってもらいたいですよ。」

他人「いや、その外来の多い医師が大変だなと思いまして。」

市民「その上最近は科によっては紹介状なし、予約なしの患者は診ないって言うんですよ。患者は突然病気になるんですよ。そんな予約なんて言ってられないじゃないですか。」

他人「確かに病気を予見できない事は多いですね。ですが開業医にかかる事の出来ない特別の事情でもおありですか?例えば稀な疾患に罹患している為、同時期に別の疾患を治療する場合注意が必要であるとか、薬剤アレルギーが酷く前医からの詳細な情報提供が必要であるとか?」

市民「いや、そんな事はないですけどね。でも近くの町医者じゃ不安じゃないですか。」

他人「ですが高度な医療を要求される場合はともかく、一般的な治療で済むケースは開業医をまず受診された方が良いですね。」

市民「どうしてですか?私みたいな軽い患者は大きな病院に来るなって事ですか?」

他人「絶対にそうだというわけではありません。ですが開業医と小規模総合病院、中規模総合病院、大規模総合病院、大学病院のそれぞれに存在意義があるわけです。それぞれの規模に合わせて、それぞれの能力と体力で扱う疾患の棲み分けがある程度出来ている事はわかりますか?」

市民「まあ、それは何となく分かりますけど。重い病気は大きな病院で診るってことでしょ。でも大きな病院で診てもらった方が安心じゃないですか。それに小さな町医者で診てらっていて手遅れになったらどうするんですか?」

他人「そのような意見がある事も理解出来ます。ですが本当に緊急の場合は救急車を要請するとして、多くの場合は開業医をまず受診して、必要があれば紹介状を書いてもらってから受診しても重大な遅れは生じないと思いますよ。」

市民「じゃあ今回新しく来た医者が、私によそに行けって言ったのはどういう意味ですか?」

他人「あなたの病状がある程度落ち着いているので、開業医による継続した治療でまずは問題ないと判断したからでしょうね。この医師不足の時代ですから、病院と開業医での業務分担がこれからはより必要になると思います。」

市民「医者不足で、私みたいにかかりつけだった患者が追い出されるって事ですか?」

他人「本来急性期病院ではかかりつけ医の役割を果たす事が難しい面があります。かかりつけ医であればお近くの開業医の先生など身近な医師を見つける事が実際的でしょうね。」

市民「それが医者不足とどう関係するんですか?」

他人「医師不足の総合病院に軽症の患者が集まれば、それだけで外来がパンクしてしまいます。本当に医療が必要な患者さんの受診が遅れてしまう事になりますし、業務スタッフの疲労・負担も増えてしまいます。それは医師不足に拍車をかける要因となるでしょうね。」

市民「じゃあ私みたいな患者は大きな病院にかかれないんですか?」

他人「勿論そういうわけではありません。必要であれば紹介状を受け持ちの開業医が記載するでしょうし、まだその病院で経過観察が必要な場合などは、幾ら外来が混んでいたとしてもきちんと予約をいれるはずです。開業医を勧められると言う事は、ひとまず病状が落ち着いているという事で、それ程お怒りになる事もないと思いますよ。」

市民「本当は一つの病院で全部の病気を診てもらえれば、患者にとってそれ程良い事はないんですけどね。」

他人「そうですね。ですが医師不足の今はなかなか難しい事かもしれません。」

市民「早く医者不足が解消すると良いんですが。」

他人「そうですね。」

 

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市民「医者不足の原因に、研修医が大学病院から離れた事が原因と言われてますけど本当ですか?」


他人「それが原因の全てではないですが、一つの要因ではあるでしょうね。」


市民「どうして大学病院に人が集まらなくなったんですか?前までは大半の学生が残っていたんですよね。」


他人「どうしてだと思いますか?」


市民「毎度の事ですけど。大学病院は待遇が悪くて給料が安いからですか?」


他人「それも一つでしょうね。ただ今回の研修制度が始まる前に比べて、研修医の待遇はどこの大学病院でも良くなってはいますが。」


市民「待遇が良くなっているのに、前より人が集まらなくなったのはどうしてですか?」


他人「その前に、大学病院に研修医が集まらなくなって困るのはどういうことだと思いますか?」


市民「新聞の報道では大学病院に医師がいなくなった為、人手が足りなくなり地域に派遣する余裕がなくなってきたという事でした。そう言うマンパワーの不足は困る事ですよね。」


他人「そうですね。ですが、この研修制度が始まってからまだ3年です。例年の1年目から3年目の医師の供給が減った事になりますが、医局の中の構成比としては大きいものではありません。」


市民「どういう意味ですか?」


他人「医局に属している医師数は、50歳半の教授が主宰する教室では1年目から30年目位までの医師の集団です。年度に拠り入局者数の増減はあるでしょうが、今回の研修制度に関連する学年は医局にとって1割程度の人数です。」


市民「1割の医局員が減るだけで、地域での医療崩壊が進むほど元々医師不足だったという事ですか?」


他人「短絡的にそうなるわけではありません。中途で医局から離れる中堅医師数を考慮しなければいけません。ですが、全国でも数少ない有力大学の巨大医局を除いては、多くの地方大学の零細医局ではその1割が大きな戦力となっていた事は事実です。」


市民「そうは言いますけど、輩出される医者の数は変わってはいないんですよね。大学に集まらなくなった分、地域に残っているわけじゃないですか?」


他人「勿論総数は変わっていません。昔から研修制度を敷いていた有力一般病院は未だに研修医に人気ですし、地方でもベッド数の多い研修指定総合病院はそれなりの充足率となっています。」


市民「それ以外の、今医師不足にあえいでいる小~中規模の病院や、地方の救急指定を取り下げなくてはいけなくなっているような病院には研修医は集まってこないんですか?」

他人「そういう病院は元々臨床研修指定になっていなかったり、そのような医師不足の病院では充実した研修をする事ができず余計に若い医師が集まらなくなっているようですね。」


市民「そういう勝ち組病院、負け組病院を生む原因となっているのが、その研修制度なんじゃないですか?」


他人「ですが、そういう病院に研修医を置いたとして果たしてどうなるでしょうか?まだ医師になりたてで、教育が必要な研修医を、ただの戦力要因として期待するような病院は受診する患者さんの立場としても望ましいものでしょうか?」


市民「そうかもしれません。じゃあそういう教育の必要な研修医は大学である程度鍛えてから地域に出て、その間はその教育を終えた4~7年目位の戦力として期待できる医師が派遣できるようになれば良いんじゃないですか?」


他人「今まで大学病院の医局が主導していた医師派遣制度は、その仕組みに似通っていたものだったんでしょうね。確かに教授権力の集中、名義貸し、金銭の不透明な流れなど、かつて医局が絶大な権力を持っていた時は批判されて仕方がない一面がありました。ですが、そういう地域のセーフティーネットとして医局が機能していた現実も認識しなくてはいけないでしょうね。」


市民「じゃあ医局を健全化して、研修医を大学に集めれば全て上手くいくんじゃないですか?」


他人「その大学病院に研修医が集まらないと言うのが、現在の課題のわけです。」


市民始めに戻るというわけですね。一体研修医は大学病院の何が不満なんですか?大学病院は地域の最先端の医療を誇るエリート集団で、そこで研修する事は研修医にとって魅力じゃないんですか?確かに給料は安いかもしれないけど、学びたいって意欲があればそんなの我慢できるんじゃないですか?」


他人「実際がそうであれば我慢できるかもしれませんね?」


市民「実際は違うんですか?」


他人「大学病院という選択肢には幾つか理由があると思います。出身地に戻り開業を考える場合、やりたい分野で進んだ業績のある医局で学びたい場合、学閥を考えて出身大学と違う大学で学びたい場合、働きたい病院を関連病院とする医局に入る場合など明確な理由がある場合などは数年間の我慢も出来るかもしれません。ですが、初期研修で臨床能力を主に身につけたいとする場合、避ける学生が多いのが現実です。」


市民「何故ですか?臨床能力は大学だと身に付かない訳ではないですよね。むしろ最先端の病院で学ぶ事は貴重な機会じゃないですか?」


他人「大学病院の役割は何だと思いますか?」


市民「患者さんを診て治療する事と、患者さんの為に新しい治療を見つける事と、学生さんに教える事でしょうか?」


他人臨床、研究、教育の3本柱ですね。その中で研修医の教育も勿論大切な役割です。」


市民「じゃあ良いじゃないですか。それが何で臨床重視の学生が大学病院を選ばないか分からないですよ。」


他人大学病院の研修医は採血、点滴、それにデータ張りだけ上手くなる。」


市民何ですかそれ?


他人「知り合いの研修医が言っていた事ですよ。大学での研修医の役割は何だと思いますか?」


市民「それは勿論知識と技術を学んで、チームの一員として治療に参加する事じゃないですか?」


他人「そうですね。その中で初期研修で必要な臨床技能を身につける事が、今回の新臨床研修制度の目標です。ですが、大学病院を避ける学生は、大学ではそれを学べないからだと言っています。」


市民「何故ですか?その地域でも有数の医者の数、ベッドの数、患者の数を抱える大学病院なら色々勉強できそうじゃないですか。」


他人「多くの医者がいれば実際に研修医が経験できる手技は少なくなり、患者の数が多くても一般病院では稀にしか見る事のない病気が多く、一般的な症例を経験できなかったり、また患者が多ければその分雑務が研修医の主な仕事になるというのが理由の一つです。」


市民「雑務って何ですか?人の命を救う仕事に雑務や雑用なんてあるんですか?」


他人「病院で行われる業務は全て必要な仕事です。その仕事を役割とする職種は必要であり、必要な役目を担っています。ですが、ここで言う雑務とは研修医、医師にとっての雑務という意味です。」


市民「例えばどう言う事ですか?さっき言っていた採血や点滴の事ですか?」


他人「医師になりたての時は採血手技や点滴手技などを学ぶ事も必要でしょう。ですが大学病院の中には1日中採血や点滴の業務のみに追われたり、カルテに検査成績を貼る事ばかり仕事として与えられている研修医もいます。また検査までの患者の移送、薬局まで薬を取りに行く、採血スピッツを検査室まで持っていく、点滴などの調剤・ミキシング、時間外手術の機械出しなど、本来の医師業務
ではない
仕事が日常業務の大半に費やされる事も多いようです。」


市民「ですが、どれも必要な事ですよね。仕事としてやるのも仕方ないんじゃないですか?」


他人「確かに仕事を覚える事は必要です。ですが、医師が余っているなら別ですが、この医師不足の中一般病院などでは他職種が行う業務に、研修医とは言え医師が主たる業務として行っている現状は資源の非効率的な利用でしょうね。また、そのように本来医師でなくても行える業務を仕事として与えられる大学病院を、研修先として選択しない研修医が増える原因ともなっています。」


市民「そうして大学から研修医がいなくなって、地域の医者不足にも拍車がかかるわけですね。」


他人「理由の一つにはなっているでしょうね。」


市民「じゃあ大学病院の研修内容を変えれば研修医も集まってくるんでしょうか?」


他人「研修内容を見直せば増える要因にはなるかもしれません。ですが難しいでしょうね。」


市民「どうしてですか?この医者不足の時代、改善していかないと大学病院自体だって困るんじゃないですか?」


他人「そうですね。ですが大学病院は看護師の力が強く、業務の見直しには抵抗が強いでしょうね。またそのような雑務は研修医が行うべきと言う伝統が強く残っている為、急な変更は望めないと思います。」


市民「じゃあどうしたら良いんですか?大学病院に研修医は集まってくるんですか?」


他人集まる大学病院は更に集まり、集まらない大学病院は更に減っていくでしょうね。」


市民「私達の地域の大学病院はどちらでしょうか?」


他人「どちらでしょうね。」

 

市民「地元の産科医不足が深刻で、知り合いの娘さんも里帰り出産を断れたって困っていました。」


他人「それは大変ですね。今はどこも産科医不足と言われていますね。」


市民「まだ妊娠12週位なのに、ここで産むか決めて予約を取って下さいって言われるんですよ。そうしないと予約枠が一杯になって産めなくなりますって。」


他人「産科医不足で里帰り出産を制限していたり、半年以上先の分娩枠まで埋まっている病院もあるようですね。」


市民「こうして地元の病院で産めないと余計少子化に拍車がかかるんじゃないですか?」


他人「そうですね。ただ病院も地元の人のお産だけで精一杯と言うのが実情なんでしょうね。」


市民「私達の市ではまだお産を扱っている病院や産院が幾つかありますけど、他の町では全くお産を扱う病院が無くなって、隣の市まで妊婦健診に通っています。何かあったらと心配で。」


他人「交通の便が悪い地域や、自分で車を運転できない妊婦さんなどは大変でしょうね。」


市民「本当にそうですよ。何か病院の先生方がどんどん辞めて、その上次の先生が来なくて、産科自体なくなるらしいです。婦人科は月に数回大学病院からバイトの先生が外来に来るらしいですけど。」


他人「大学病院の医局もどこも人手不足ですからね。新入局員も少ないようですし。」


市民「どうしてここ最近医者不足、特に産科医不足がこんなに酷くなったんでしょうか?何か対策はなかったんでしょうか?」


他人「産科医不足の原因は何だと思いますか?」


市民「ニュースなどでは過酷な労働条件で医者が逃げ出したとか、訴訟が多くて逃げ出したとか。」


他人「そうですね。産科医に限らずですが、医師不足の病院では劣悪な労働環境で勤務する医師が多いです。そして産科は24時間いつお産があるか分からず、拘束時間が長い事が余計に労働条件を悪化させているのでしょうね。」


市民「よく拘束時間が長いって言われますけど、何とかならないんですか?」


他人「拘束時間を短くする為には人員を増やすしかないでしょうね。」


市民「でもどこの病院も医者不足なんですよね。実際増やせる見込みなんてあるんですか?いなくなった医者の補充もできないのに。」


他人「そうですね。人員を増やすには辞める医師を減らし新しく入る医師を増やすか、お産を制限して受け持ち患者数を減らすか、もう一つは医師の集約化位しか方法は無いでしょうね。」


市民「どの方法でも患者の負担が増えるのは避けたいです。どうしたら負担なく増やせるんでしょうか?」


他人「難しいですね。どの方法でもある程度妊婦さん、患者さん、そしてそれ以外の地方の人の負担は増えざるを得ないでしょうね。」


市民「どうしてですか?例えば新しく産科を選ぶ医者を増やせば、良いだけの事だと思いますけど。」


他人「ですが、現状を変えなければ産科を新しく選ぶ研修医、学生は増えていかないですよね。また、同じく現状を変えないと産科を辞めていく、若しくは分娩に携わる事を辞めていく医師を減らしていけません。」


市民「現状を変えるには人員を増やすしかないんですよね。環境を改善して医者を呼び込む為にはその前に人員補充が必要、そんな難しい事どうしたら可能になるんですか?」


他人「ですから産科医不足が止まらないのでしょうね。その上訴訟が多い事も産科医不足に拍車をかけているのも事実です。」


市民「人員補充が難しいのも分かります。労働条件が厳しいのも分かります。でも、それでも、安全な医療を当然患者は求めているんです。何かあった時、不適切な医療がされていたら訴えるのは仕方がないと思うんですが。」


他人「勿論明らかな問題があれば法に照らして裁かれるべきです。残念ながら明らかなミスと言うのはあり得ます。その場合補償も含め裁判に訴えるのは当然の権利でしょう。」


市民「じゃあ、産科医不足の原因の一つになっている訴訟はそうじゃないって言うんですか?訴訟が多いのはその分未熟な医療が産科で多いからで、仕方がないんじゃないでしょうか。それに例えば子供が障害を一生背負っていく事や、不幸にも妊婦さんが亡くなったりしたら誰でも訴えたくなりますよ。」


他人「それも勿論明らかなミスがあれば裁判ではっきりさせるべきです。ですが、一定の確率で妊産婦死亡はあり得ます。また脳性麻痺などの障害を持った子供も、22週の児でも救命できるようになった日本の周産期医療の進歩で逆に確率的に生まれえます。誰が悪いと言うわけではなく、出産の過程の中で避けられない不幸なケースは現在の医療水準では起こり得ます。」


市民「確かにそうかもしれません。ですがそうやって全部不幸なケースで済ませていたら、明らかなミスが見過ごされるじゃないですか。人の命、それも妊婦と新生児と言う二人の命を扱う職種だからこそ、仕方ないでは済まされないですよね。」


他人「仕方がないで済ませる事は勿論誤りです。その事例についてはきちんとした経過の見直しも必要でしょう。ですが、そのように避け得なかった事例に対してもセンセーショナルに煽り立てるマスメディアの影響は、現場の医師にとって大きな負担でしょうね。」


市民「事実の報道は大事だと思いますけど。そうしないと結局関係者だけの密室で終わらせてしまいそうだし。」


他人「事実の報道は必要です。ですが対案無き批判、若しくは現実性を伴わない批判は結局医師を防衛医療に走らせる事になり、ハイリスクの患者を扱う病院自体減少し、産科医不足を加速させるでしょうね。」


市民「もう一つの医者の集約化ですけど、そうやって医者を集めてしまったら地域の妊婦はどうしたら良いんですか?通うのは不便ですし、何かあったら心配ですよ。」


他人「同じような意見で産科医療センター化構想への批判はありますね。」


市民「それにそうやって医者を沢山集めて機械的に、ベルトコンベア式にお産をさせるって言うのはどうかと思います。」


他人「機械的、ベルトコンベア式と言うのはどういう意味ですか?」


市民「医者の都合で陣痛促進剤を使ったり、帝王切開をしたり、週末のお産は避けたり、それにその時たまたま当直の医者がお産をしたりと、一生に何度もない大切な瞬間なのに自分らしさがなくなりそうじゃないですか。」


他人「安全を考慮しての医療の介入は必要だと思いますが。ではどのようなお産が望ましいと思いますか?」


市民「それは勿論安全で、かつ自然な分娩で。今はテレビでもアクティブバース、バースプランなど自分で自然なお産を追求する風潮がありますよね。そう言う自然な形のお産とかけ離れた分娩に、センター化にするとなってしまうんじゃないですか。」


他人安全と自然を両立するのは実際には難しい事です。勿論自然に分娩が進行すれば問題なく、妊婦さんの希望も分かりますが、産科医不足の現状では妊婦さんの希望に沿った通りに出来るか難しいところですね。」


市民助産師さんを活用すれば今の産科医不足、産科医の負担も幾らか解消するんじゃないですか。それに妊婦さんの希望も叶いそうだし。」


他人「最近マスメディア、地方の病院でも助産師を積極的に活用しようと言われていますね。助産師外来などを設けている病院もありますし。」


市民「そうですよ。分娩の殆どが、医療の介入を必要としない正常分娩なんですよね。その範囲は助産師さんに任せて、産科医は本当に治療を必要とする場合だけ登場すれば良いんじゃないですか?」


他人「理想的にはその通りでしょうね。ですが、お産は正常な経過を辿っていても突然問題が発生することがあります。分娩経過中に帝王切開に移行する事が必要な場合もありますし、新生児仮死の場合当然医療介入が必要になります。」


市民「そんな時はすぐ産科医や新生児科医に診てもらえば良いじゃないですか。」


他人「うまくそのような病院と提携が出来ている産院や、人員にある程度余裕があり当直体制を敷いている病院なら可能でしょう。ですが、助産師が扱う分娩が増えてもバックアップする体制がなければ何かあった時に対応できないでしょうね。そうすると医師の拘束時間は変わらず、また問題が生じてから突然搬送されたハイリスクのケースに対応しなければいけないなど、医師不足の現状では難しい点もあります。」


市民「結論として産科医不足はどうしたら解消するんですか?」


他人「今年、来年と言う短期的な解消は難しいでしょうね。今は一つ一つ問題点を改善していくしかないと思います。」


市民「その間患者は不安を抱えながらですか。」


他人「同時に現場の医師は負担が減らないままです。」

市民「医師不足の原因の一つは大学病院に医者が集まらなくなったからと聞いたんですが。」


他人「一つの原因はそうでしょうね。医局に人が不足し、地域に派遣する余裕がなくなった大学もあるようです。」


市民「どうして大学の医局に医者を派遣する権限があるんでしょうか?県立病院や市立病院の人事権は自治体にあるんじゃないですか?」


他人「本来は公務員である県立病院、市立病院の人事権は各行政機関の長にあるでしょうね。」


市民「その割には医局の都合で住民の声も聞かず勝手に医者を引き揚げたり、人事権は医局にあるようで、迷惑な話です。」


他人「以前と比べ医局の権限はだいぶ弱なりました。その分医局を抜ける医師も増え、独自に転職する医師も増えているようです。」


市民「その割には地域の病院の医師募集は難航しているようですが。」


他人「医局を抜けて独自に就職しようとする医師のニーズと、募集している地域の病院のニーズがマッチしていないんでしょうね。」


市民「どう言う意味です?働きたい医者と人手不足の病院、条件は合っているんじゃないですか?」


他人「医師不足の病院で募集をしているのはどんな病院ですか?」


市民「それは、地方にあって、なかなか医者が来てくれなくて。」


他人「どんな科が不足していますか?」


市民「新聞の報道ではやっぱり産科、小児科、それに内科、麻酔科、救急などでしょうか。」


他人人手不足の科の医師を募集しているわけですよね。」


市民「まあそうですね。全国的に不足してる医師はご他聞に漏れず、地域の病院じゃ更に不足していますよ。」


他人「全国的に不足している科の医者を、地方にあって医者がなかなか来てくれない病院に呼ぶハードルは低いものでしょうか


市民「それは、まあ高いでしょうね。だから来てもらえなくて困っているんですよ。」


他人「一方医局を抜けて自分で就職しようとする医師の希望は、どんなものだと思いますか?」


市民「それはやっぱり楽で給料が高くて都会にあって、医師不足の病院と反対の病院でしょうね。わがままだから。」


他人「わがままだからではなく燃え尽きた医師が、給料はそれ程高くなくても激務ではなく人間らしい生活をできる病院を求めているのが実情でしょうね。」


市民「人間らしいって、医者不足の病院じゃ人間らしくないって言うんですか?」


他人「医師不足の病院で医師が補充されると、その医師の生活はどうなると思いますか?」


市民「それは、みんなから感謝されて頼られて、やりがいのある生活が送れると思いますよ。」


他人「そういう側面も勿論あるでしょうね。ですが医師不足の科の原因は何でしょうか?その医師とその医師の家族の時間を犠牲にする激務です。」


市民「大変だとは思います。でも仕方がない事ではないでしょうか?」


他人「仕方がない事かもしれません。そんな労働環境でも先人達が勤務してきた事は事実ですし。」


市民「そうですよ。今までもやってきた事なのに、ここになってやりたくないとか、できないとかは困りますよ。」


他人「ですが、例えば医師不足が叫ばれる前は3人体制でやっていた科が、医師不足のあおりで2人体制になった科はどうでしょう?負担は以前より増えていますよ。当直回数も増えるでしょうね。」


市民「そう言う科こそ募集して増やせば良いんですよ。そうすれば労働条件も改善して医者も集まるでしょう。」


他人「医師不足の科で減った分を補充して、更に増員すると事でしょうか?」


市民「そうです。良い考えじゃないですか?」


他人難しいですよね?


市民難しいですね。」


他人「加えて、患者さんの医療に求めるクオリティは先人達が働いていた時代とは比にならない程高くなっています。」


市民患者が病院・医者を選ぶ時代ですからね。」


他人「そういう地域があるのもまた事実です。100%の安全は勿論、納得いくまでの時間をかけた説明、サービス業としてのホスピタリティ、24時間全科対応を求めるコンビニ医療。」


市民「患者からすると当然の権利だと思うんですが。」


他人「そのような病院が理想であるとは思います。ただ、肥大した権利意識は医師の負担をどこまでも増やすものですね。」


市民「医者不足を改善する為に何かを諦めろって事ですか?」


他人「諦める事はありません。ですが、現状を認識してどこまで要求するかの折り合いは患者側にも必要だとは思います。」


市民「それは今の医療を後退させる事につながらないでしょうか。確かに今の医者不足は重大な問題だと思います。ですが、だから患者に我慢しろと言うのは強者の意見じゃないですか?」


他人程度によると思います。本当に必要な部分は当然求めるべきです。ですが過剰な部分はやはり改めるべきではないでしょうか。」


市民「具体的にはどういう事ですか?」


他人「それはまた別の機会にしましょうか。」


市民「医者と地方は対立するものじゃないですよね。」


他人「そうですね。お互いの最大公約数が早く見つかると良いですね。」

市民「最近産科医不足が言われていますね。私達の市民病院でも産科が閉鎖されるそうです。」


他人「今は色々な自治体で産科医不足が言われていますね。」


市民「確かに産科の医者が大変な事は最近のニュースでわかりました。」


他人「どのへんが大変そうでしたか?」


市民訴訟が多いとか労働時間が多いとか、その割には他の科と比べて特に給料が良いわけではないとか。」


他人「そうですね。今の医学生や研修医が産婦人科入局を避ける理由の幾つかはそれらでしょうね。」


市民「でも医者になろうって人は人の為になろうと思って医者になったんですよね。それを大変だからって避けるのは医学生や研修医が自分本位だからじゃないですか?」


他人「自分本位ですか?」


市民「そうですよ。普通の仕事じゃないんですから、大変でも忙しくても、それでも人の為って高い志を持った人達が医学部に入っていれば、こんな医者不足にならなかったんじゃないですか?」


他人「医師にもう少し自己犠牲の心を持って、国民の為に尽くして欲しいと言う事でしょうか?」


市民「そう言ってしまえば少し医者が可哀想ですけど、それをわかってて医者になっているんですよね。嫌なら医者を辞めるって選択もあるんですから。その分きちんと働いてくれる人に医者になって欲しいですよ。」


他人嫌なら辞めろ、はい辞めますと。そんな流れで地方の医師不足に拍車がかかっていますが、ご存知ですか?」


市民「本当に辞めてしまうんですか?」


他人「辛い職場に人は自然と集まらなくなります。確かに以前医師過剰の時代が来ると言われ、嫌なら辞めれば?と強い立場でものを言える場面があったかもしれません。ですが今そんな事を言っていると、医師はどんどんその病院から離れていくでしょうね。」


市民「そんな無責任な。」


他人「ですが、幾ら医師に自己犠牲、国民の健康の為という志があっても限界があると思いませんか?」


市民「限界?もう我慢できないと怒ってしまっているんですか?」


他人「怒りもあるでしょうが、わかってもらえないならもう良い、と言う諦めも強いでしょうね。」


市民「諦めないで発言してくれないと、市民の側だってわからないですよ。」


他人「多分医師は今までも発言してきたでしょうね。忙しすぎる、当直明け通常業務は辛い、拘束時間が労働時間に含まれない、家庭を犠牲にするのを当然とする風潮、患者の過大な要求、結果論で乱発される医療訴訟、慢性的な現場の医師不足などなど。そんな事などは医師の甘えと言う事で、あまり注目されてこなかったのではないでしょうか」


市民「でも最近は随分医師の負担が多いって事が報道されていますよ。」


他人「現場から医師が去って、ようやく労働環境を見直す動き、報道が出てきたようですね。遅すぎた感がありますが。」


市民「でも、やっぱり甘えた医師の発言に聞こえなくもないんですが?年収1000万円を超える職種の人達が幾ら労働条件を改善しろと言っても、平均年収400万円程度の国民の多くは納得できないんじゃないですか?特に所得の低い地方では尚更です。」


他人「なかなか、他職種の辛さをわかろうとしても難しいですからね。」


市民嫌なら辞めてしまえば良いのに。あ、その辞められた結果が今の医者不足なんですね。」


他人「大きな要因ではあるでしょうね。今は辞めた医師にも次の就職先、それも労働時間が減って給与が上がる環境が残っています。燃え尽きた医師が次の職場に移りたがるのを責める事は可能です。無責任なと怒るのも理解できなくはありません。ですがその前に、どれだけ医師不足の背景となる現場の医師の言葉に耳を傾けてきたか、ですね。」


市民「諦められる前にですか。」


他人「そうですね。」




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